立川の社会保険労務士法人、育成協会です。
本日は、私たちが顧問先企業様にお勧めしている助成金との付き合い方についてお話ししたいと思います。
もらえる助成金はもらっておいた方がいい!?
顧問先企業様から助成金に関するお問い合わせはよくいただきます。
「なんかこういう助成金があるって聞いたんですけど申請できます?」とご相談いただくのですが、大抵の場合が”うまい話”として聞いていらっしゃるので、対象となる従業員の方がいるのかどうか、私たちが持っているデータと照らし合わせながら経営者の方や担当の方にお話を伺います。
助成金は申請するために満たしておかないといけない細かな要件や、法令を超える水準の処遇を求められるものもあります。ですので”取れそうな助成金があるから申請してみる”前に、中長期的に経営面に無理が出ないかどうか検討しておく必要があります。
そういう意味でいうと、”もらえる助成金はもらっておいた方がいい”というより、”会社が良くなる助成金はもらっておいた方がいい”と育成協会では考えています。
助成金を申請することは、会社を見直すことに繋がる
助成金の申請はもちろんお金をもらうために行いますが、申請のプロセスは自社の労務管理を見直すとてもいい機会になります。
例えば、『キャリアアップ助成金』という有名な助成金があります。
これを申請するためには、就業規則を整えたり、勤務時間をきっちり管理する必要があります。この助成金の本来の目的は正規雇用を生み出すことですが、不完全だった就業規則や労務管理を申請の過程で整えることで、既存の正社員にとっても働きやすい環境に改善することができます。
このように助成金は”会社をよりよくしていくきっかけ”として捉えることがすごく大事だと思います。
先ほども言いましたが、お金だけもらってあとは何とか帳尻を合わせるというスタンスで進めてしまうと、先々に無理が生じることがあります。
助成金で経営が苦しくなる!?
取り敢えずもらえそうだからと助成金を申請して、あとで大きなしっぺ返しがくることがあります。
例えば、キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)という助成金があります。これは、本来必ずしも実施義務のない有期契約労働者に定期健康診断や人間ドックを実施することで得られる助成金で、1事業所当たり38万円支給されます。就業規則に有期契約労働者に定期健康診断を会社負担で行う旨を記載するだけで良いので申請は比較的容易なのですが、もちろん今後毎年定期健康診断もしくは人間ドックを行わなくてはいけないので、企業の負担額は助成額を上回る場合があります。
かといって、「やっぱり定期健康診断の実施を止めにしよう」と就業規則を変更すると不利益変更になってしまうので、従業員に訴えられてしまうリスクがあります。
この他にもキャリアアップ助成金(賃金規定等共通コース)といって、有期契約労働者と正社員の賃金テーブルを共通化した場合に支給される助成金があります。1事業所あたり57万円もらえるのですが、長期的には企業側の負担の方が大きくなるため、助成金について詳しくご説明すると「やっぱり止めておきます。」と仰られることも少なくありません。
(助成金に関する情報は平成30年11月1日時点のものです。)
助成金は会社を成長させます。
少しネガティブな話をしたのですが、助成金自体は素晴らしい制度です。
それと同時に、育成協会では顧問先企業様の長期的な成長のサポートを理念としているため、お客様ごとの会社のスタンスにその助成金がフィットするのかをしっかりと考えたいと思っています。
助成金のご相談をいただいた際に、そういった判断をできる存在でいるために普段行う手続きを通じて個々の会社様の考え方を把握するようにしています。この記事を読んでいただいた皆様も、助成金申請を外部に依頼する際は企業の考え方を踏まえたサポートをしてくれる社労士事務所をお選びいただくことをお勧めします。