経営者からの相談
顧問先の経営者の方々から頂いたご相談をご紹介します。
顧問先の経営者から日々様々な相談が寄せられます。トラブルシューティング事例として経営者の方々のお役に立てばと思い、その一部をご紹介させていただきます。
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- 中小企業経営者のための労基署臨検対策
労働基準監督署は、日本全国に321署を有し、事業場(工場や事務所など)での労働条件を監督する役割を果たしています。
労働基準監督官が立ち入り検査を行う「臨検」は、①労基署が主体的・計画的に選定
②労働者からの申告
③労働災害の発生の3つのうち、いずれかの理由に基づき実施されます。
臨検の結果、労働法令違反が判明した場合、事業主に「是正勧告書」「指導票」が交付され、違反の是正を指導します。是正勧告書は明らかな違反時に、指導票は改善が望ましい場合に使用されます。
具体的な違反事例には、
・労働時間の不適切な管理
・労働法に反した時間外労働や休日労働
・時間外・休日労働の割増賃金不支給
・定期健康診断の未実施などがあります。
是正勧告書や指導票の受領後、事業主は期限までに「是正報告書」「指導報告書」を労基署に提出しなければなりません。違反の是正が適切に行われない場合、重大で悪質な事案については取調べなどの任意捜査や、捜索・差押え、逮捕などの強制捜査がなされ、検察庁に送検されます。送検された企業は労働局のホームページで公表されることもあります。
■労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和4年8月1日~令和5年7月31日公表分)
https://www.mhlw.go.jp/content/001101046.pdf(引用元:厚生労働省労働基準局監督課)
なお、法改正の対象となる業種に対し重点的に臨検を行う傾向があります。2024年4月に残業時間上限規制の適用が始まる建設業、自動車運転業、医師業は特に注意が必要です。
違反は企業に重大な影響を及ぼす可能性があるため、定期的な法令情報収集と社内規程の見直しが欠かせません。育成協会の社労士チームが貴社に合わせたアドバイスを行い、臨検の立ち合いも承ります。どうぞお気軽にご相談ください。
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- 会社都合退職で起きること
「会社都合退職」は、事業縮小や雇止めなど、会社の都合による退職を指します。いじめや嫌がらせによる退職も会社都合に該当する場合があり、労働者の雇用維持を重視する日本の労働法規では、抑制すべきものとされています。
そのため、「会社都合退職」を行った企業に対しては雇用関係の助成金について申請制限が生じ、キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金、人材開発支援助成金などは、一定の期間申請できなくなります。
会社都合退職では、従業員にとってのメリットも存在します。自己都合退職では通常2か月と定められた雇用保険の給付制限がなく、わずか7日間の待機期間を過ぎれば、基本手当を受給できます。
(注、自己都合退職でもこの待機期間を会社都合と同じにしようとする動きがあることが最近報道されています(人材流動化を促進するため))
ただし、本来は自己都合退職であるにもかかわらず、従業員の便宜を図り、会社都合退職であると申請した場合、不正受給に加担したものとみなされ、受給者と連帯して、いわゆる受給額の3倍返しを命じられる可能性があります。
善意からの行動でも、不正受給に関わることは避けるべきです。
また、雇用関係の終了理由について、事業主と離職者の主張が食い違うことがあります。判定は客観的な資料を元にハローワークで行われますが、訴訟に至る可能性も考慮すべきです。
会社と従業員の痛みを伴う離職を避けるためには、日頃から労使間の良好な関係を維持しておくことが重要です。
まず、労働条件通知書を必ず提示しましょう。育成協会フォーマット集をご利用ください。また法改正と労働環境の変化に対応した就業規則の整備も欠かせません。
育成協会では、社労士チームがアドバイザーとして支援する顧問契約サービスをご用意しております。お気軽にご用命ください。
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- 2024年秋、「社保106万円の壁」出現に備えて
「103万円の壁」———配偶者の扶養に入って働く方が、所得税非課税で得られる年収の限度額が103万円です。扶養している方も配偶者控除を満額受けることができます。
最低賃金の引き上げに伴い、この限度額内で働ける時間は短くなる一方、2024年10月から、厚生年金被保険者数が51人以上の事業所に、以下の加入条件を満たすパートやアルバイトの方は社会保険加入が義務化されます。
① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること(従来は30時間以上)。
② 雇用期間が2ヶ月以上であること。
③ 給与額が8万8千円以上(年収換算で106万円以上)であること。
④ 学生ではないこと。
—条件③により、「106万円の壁」が新たに出現します。
従業員が社会保険に加入をすれば、労使共に保険料が発生し、会社の負担が増大するとともに、税扶養の範囲を越えてでも極力収入を増やしたいと考える従業員にとっては悩ましい壁かもしれません。
しかしながら社会保険加入によるメリットもあります。扶養内で働いていては受けられない保障、「傷病手当金」を受けられる、基礎年金以上の老齢・障害・遺族厚生年金が受給できるなど、いざという時にこれまでの扶養者に頼らず、社会保険加入当事者として本人の保障を受けることが可能となります。
社会保険料の負担増と保障による安心。対象となる従業員の方と個別面談等で事前に話し合い、
● 壁を越えない範囲で勤務することを徹底するか
● 壁を越えて社会保険に加入し、より主戦力として活躍してもらえるかを確認しておくとよいでしょう。
加入の選択をした場合は、会社負担分の保険料は必要コストとして今年度中に予算組するなどしておく必要があります。なお、年収の壁に対し、企業に1人当たり最大50万円を助成し、手取り減を防ぐ仕組みが政府内で検討されていますので、その動向も今後要注目です。
この社会保険適用拡大について、ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽に育成協会までお問合せください。
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- 60時間超残業手当について
2023年4月1日から中小企業における時間外労働の対応が変更されました。経営者として押さえておきたいことは以下の通りです。
①残業時間が60時間を超える場合、60時間までの分は25%の割増が適用されますが、60時間を超える部分の時間にはさらに25%上乗せして50%以上の割増を支払う必要があります。
②ただし、この25%上乗せ部分については休暇で代替することも可能です。例えば、76時間の残業の場合、60時間を超える16時間については25%の割増を支払う代わりに、4時間の休暇を与えることで代替できます。(76時間の25%の割増は必要です。)
③60時間を超える残業手当に関しては、就業規則(給与規定)の改定が必要です。ただし、実際に60時間超の残業が発生しない場合は、他の改定に合わせて対応すればよく、即時改定する必要はありません。
④60時間超の残業計算が組み込まれている給与計算ソフトを使用している場合でも、60時間超の残業が発生する前に設定の確認をしておく必要があります。
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- 残業未払いに対して元社員から裁判を起こされました。
ご相談内容(飲食店)
元社員から残業代未払い請求についての訴えを起こされました。
育成協会の対応
この時、本人の申告と実態を計算し直す必要がありました。
また、訴えを起こした社員は、勤務態度に問題があったため店長にヒアリングし、就業中に寝ていた時間、その他問題のある行動を把握してレポートを作成、労働基準監督署に提出しました。
結果として。残業代未払いについて2割程度、こちらの要求が通り、支払う金額を抑えることができました。