経営者からの相談
顧問先の経営者の方々から頂いたご相談をご紹介します。
顧問先の経営者から日々様々な相談が寄せられます。トラブルシューティング事例として経営者の方々のお役に立てばと思い、その一部をご紹介させていただきます。
-
- 雇用の流動化が加速!2025年4月法改正に備えを
日本のバブル期から就職氷河期を経て、再び深刻な人手不足の時代が訪れています。2024年4月の大卒就職率は過去最高の98.1%を記録し、コロナ明けの経済活動再開や少子化の影響で人材獲得競争が激化しています。
バブル期と現在の違いの一つは、終身雇用制度が薄れたことです。特に若い世代はワークライフバランスを重視し、望む働き方が叶わない場合、すぐに職場を離れる傾向が見られます。
雇用の流動化を促進するため、2025年4月、雇用保険法の改正が行われます。自己都合退職者が基本手当(いわゆる失業保険)を受けるまでの給付制限期間の原則が2カ月から1カ月に短縮され、さらにリスキリングを実践した場合は給付制限が免除されます(具体的には、教育訓練給付金の対象となる教育訓練その他の厚生労働省令で定める訓練を、離職日前の1年以内に受けたことがある人、および離職日以後に受ける人が対象となります)。
これにより、転職が活発化し、スキルアップに意欲的な人材の離職が後押しされるため、企業は職場定着率を高める工夫が求められます。
以下に対策の例を幾つかご提案します。
1. 職場のDX(IT化)
タスク管理から給与計算、受注管理、契約書チェックまでITツールを活用し、効率的な業務運営を実現します。
DXが進んだ職場は若い世代に好評で、定着率向上が期待できます。
また、ペーパーレス化によりリモートワークの導入が容易になるだけでなく、人手そのもののスリム化が望めます。
2. 社員のスキルアップ支援
資格取得手当や人事評価に資格を導入し、スキルアップを奨励することで、能力向上を重視する意欲的な社員の定着率を高めます。
3. 適正な賃金支給
業界や地域の賃金水準を把握し、他社と比較して見劣りしない賃金を設定することで人材の流出を防ぎます。
各労働局やハローワークが公開している賃金データ(エリア別、職種別、一般社員/パート社員)を参考にすることが有効です。
4. 業務のアウトソーシング
貴社の社員様が本来の業務に集中できるよう、間接業務を外注するのも一案です。
入退社の手続や助成金申請は社会保険労務士に、年末調整や決算は税理士に、特許・知財関係は弁理士に…等々。
また、データ入力やSNSの運用、ロゴ作成など、多岐にわたる業務委託を発注できるWebサービスも増えました。
これらの対策を通じて、雇用の流動化が進む中でも優秀な人材を確保し、定着率を高めることが求められます。
魅力ある職場作りに、人事関係ITツールの導入から人事評価制度の構築、賃金規程の作成まで、トータルにサポートする育成協会をぜひご利用ください。
-
- ポイントは労働時間の管理!2024年問題の処方せん【トラック輸送業界編】
時間外労働上限規制の導入
長距離輸送など、長時間労働が常態化している運送業では、2024年3月末までの5年間にわたる働き方改革関連法の猶予期間が終了し、トラック運転手の時間外労働上限が年960時間(月平均80時間。休日労働を除く)に制限されます。これはトラック運転手も労基法を遵守し、通常の労働者として時間管理する必要があることを意味します。
この課題を放っておくと、法令違反による罰金(違反者一人当たり30万円)を課せられる、風評被害による採用への影響が出る等、企業経営にとってのリスクにつながります。
上限規制対応にITツールが効果的
上限規制の適用に向け、長時間労働の是正に限らず、特に中小の物流企業ではあらゆるシーンで変革が求められるでしょう。このようなときに重要なのは、ITツールを活用した業務の効率化ではないでしょうか。トラック輸送業に適したツールを見ていきましょう。
■勤怠管理システム
勤怠管理システムを導入することにより、労基法に基づく労働時間に加え、改正基準告示(後述)を遵守して休息時間、連続運転時間、2日平均・2週平均の運転時間なども管理できます。タイムカードや運転日報、運行記録のデータを表計算ソフトに転記し、集計を行うための労力と時間が不要となります。
拘束時間のアラート設定機能を活用すれば、残り時間数を把握することもできます。
■配車支援システム
トラック輸送では積載量や運転時間も守らなければなりません。「配車支援・計画システム」は、手作業で行っていた配車業務をシステムに入力することによって、自動で配車計画を策定します。その効果として、効率的な配送ルートの策定、車両台数の最適化、過積載の防止、配車作業の短時間化等が挙げられます。労働時間の平準化に加え、積載率・稼働率の向上が期待できます。
■乗務後の自動点呼機器
物流企業では、運行の安全確保のため、運転手に対し原則として人の対面による点呼が義務付けられていますが、令和5年1月より、乗務終了時の点呼を自動で行えるようなりました。導入の要件は、(1)国交省認定機器の使用、(2)運輸支局長等への事前届け出の2点です。点呼のために人を配していた場合は、人件費の削減にもつながります。機器導入に当たっては、全日本トラック協会の自動点呼機器導入促進助成事業を通じ、助成金を申請することもできます。
なお、ITツール導入に際しては、中小企業・小規模事業者の業務効率化やDX等を支援するIT導入補助金を利用すれば、最大で経費の半額に対して補助金を受けることができます。
改正基準告示
2024年4月より厚生労働大臣の改善基準告示も改正され、年間及び1か月の拘束時間、1日の休憩時間が見直されます。
ITツールの積極的な活用は、デジタルネイティブと言われる若い世代の求人にも効果的です。事業の継続、拡大に向けて、2024年問題に取り組むことが急務です。育成協会へお気軽にご相談ください。
-
- 待ったなし!2024年問題に向けた取り組み【建設業編】
働き方改革による罰則を伴う時間外労働の上限規制は、対応が難しいとされていた建設業、自動車運転の業務、医師も2024年4月から猶予期間が終了し、適用となります。
今回は建設業の取り組みについて、お伝えします。
建設業は、元々今後担い手である団塊世代の大量離職が見込まれており、全産業平均と比較して年間300時間以上の長時間労働を余儀なくされている事実(2016年度)や、他産業では主流となっている週休2日取得も厳しい状況があります。一方、働き方改革が進んでいる他業種への人材の流出が進み、採用状況は深刻化しています。結果として事業継続が困難だと感じている建設業経営者の方は少なからずおられることと思います。
特に建設業は3Kとも言われる労働環境から若い世代に敬遠されがちで、会社の将来を担う若手の人材の確保が難しくなってきていると言われてきています。しかしながら、彼らの多くはワークライフバランスや、ゆとりある就業環境を望んでいる一方、近年はスキルアップを重視するタイプも増えてきています。このタイプは仕事を通じて能力を伸ばし、適正な評価を受け、しっかり収入を得ることを望んでいます。彼らにとって、仕事をしながら様々な資格に挑戦でき、かつ仕事の成果が形となって現れる建設業は、魅力的な業種とも言えます。受け入れ企業としては勤怠管理や書類作成をサポートするITツールを導入して極力間接作業を減らしたり、資格取得奨励制度を設けたりすることで、彼らがスキルアップを実感できる働き甲斐のある職場環境を整えることが採用力を高めることに繋がると考えられます。
人材の定着を図り、業績を拡大していくために、この働き方改革をチャンスと捉え、取り組んでみられてはいかがでしょうか。育成協会の社労士チームへお気軽にご相談ください。
-
- 中小企業経営者のための労基署臨検対策
労働基準監督署は、日本全国に321署を有し、事業場(工場や事務所など)での労働条件を監督する役割を果たしています。
労働基準監督官が立ち入り検査を行う「臨検」は、①労基署が主体的・計画的に選定
②労働者からの申告
③労働災害の発生の3つのうち、いずれかの理由に基づき実施されます。
臨検の結果、労働法令違反が判明した場合、事業主に「是正勧告書」「指導票」が交付され、違反の是正を指導します。是正勧告書は明らかな違反時に、指導票は改善が望ましい場合に使用されます。
具体的な違反事例には、
・労働時間の不適切な管理
・労働法に反した時間外労働や休日労働
・時間外・休日労働の割増賃金不支給
・定期健康診断の未実施などがあります。
是正勧告書や指導票の受領後、事業主は期限までに「是正報告書」「指導報告書」を労基署に提出しなければなりません。違反の是正が適切に行われない場合、重大で悪質な事案については取調べなどの任意捜査や、捜索・差押え、逮捕などの強制捜査がなされ、検察庁に送検されます。送検された企業は労働局のホームページで公表されることもあります。
■労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和4年8月1日~令和5年7月31日公表分)
https://www.mhlw.go.jp/content/001101046.pdf(引用元:厚生労働省労働基準局監督課)
なお、法改正の対象となる業種に対し重点的に臨検を行う傾向があります。2024年4月に残業時間上限規制の適用が始まる建設業、自動車運転業、医師業は特に注意が必要です。
違反は企業に重大な影響を及ぼす可能性があるため、定期的な法令情報収集と社内規程の見直しが欠かせません。育成協会の社労士チームが貴社に合わせたアドバイスを行い、臨検の立ち合いも承ります。どうぞお気軽にご相談ください。
-
- 会社都合退職で起きること
「会社都合退職」は、事業縮小や雇止めなど、会社の都合による退職を指します。いじめや嫌がらせによる退職も会社都合に該当する場合があり、労働者の雇用維持を重視する日本の労働法規では、抑制すべきものとされています。
そのため、「会社都合退職」を行った企業に対しては雇用関係の助成金について申請制限が生じ、キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金、人材開発支援助成金などは、一定の期間申請できなくなります。
会社都合退職では、従業員にとってのメリットも存在します。自己都合退職では通常2か月と定められた雇用保険の給付制限がなく、わずか7日間の待機期間を過ぎれば、基本手当を受給できます。
(注、自己都合退職でもこの待機期間を会社都合と同じにしようとする動きがあることが最近報道されています(人材流動化を促進するため))
ただし、本来は自己都合退職であるにもかかわらず、従業員の便宜を図り、会社都合退職であると申請した場合、不正受給に加担したものとみなされ、受給者と連帯して、いわゆる受給額の3倍返しを命じられる可能性があります。
善意からの行動でも、不正受給に関わることは避けるべきです。
また、雇用関係の終了理由について、事業主と離職者の主張が食い違うことがあります。判定は客観的な資料を元にハローワークで行われますが、訴訟に至る可能性も考慮すべきです。
会社と従業員の痛みを伴う離職を避けるためには、日頃から労使間の良好な関係を維持しておくことが重要です。
まず、労働条件通知書を必ず提示しましょう。育成協会フォーマット集をご利用ください。また法改正と労働環境の変化に対応した就業規則の整備も欠かせません。
育成協会では、社労士チームがアドバイザーとして支援する顧問契約サービスをご用意しております。お気軽にご用命ください。
-
- 2024年秋、「社保106万円の壁」出現に備えて
「103万円の壁」———配偶者の扶養に入って働く方が、所得税非課税で得られる年収の限度額が103万円です。扶養している方も配偶者控除を満額受けることができます。
最低賃金の引き上げに伴い、この限度額内で働ける時間は短くなる一方、2024年10月から、厚生年金被保険者数が51人以上の事業所に、以下の加入条件を満たすパートやアルバイトの方は社会保険加入が義務化されます。
① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること(従来は30時間以上)。
② 雇用期間が2ヶ月以上であること。
③ 給与額が8万8千円以上(年収換算で106万円以上)であること。
④ 学生ではないこと。
—条件③により、「106万円の壁」が新たに出現します。
従業員が社会保険に加入をすれば、労使共に保険料が発生し、会社の負担が増大するとともに、税扶養の範囲を越えてでも極力収入を増やしたいと考える従業員にとっては悩ましい壁かもしれません。
しかしながら社会保険加入によるメリットもあります。扶養内で働いていては受けられない保障、「傷病手当金」を受けられる、基礎年金以上の老齢・障害・遺族厚生年金が受給できるなど、いざという時にこれまでの扶養者に頼らず、社会保険加入当事者として本人の保障を受けることが可能となります。
社会保険料の負担増と保障による安心。対象となる従業員の方と個別面談等で事前に話し合い、
● 壁を越えない範囲で勤務することを徹底するか
● 壁を越えて社会保険に加入し、より主戦力として活躍してもらえるかを確認しておくとよいでしょう。
加入の選択をした場合は、会社負担分の保険料は必要コストとして今年度中に予算組するなどしておく必要があります。なお、政府は時限的な措置ですが、106万円の壁に対しては企業に1人当たり最大50万円を助成し、手取り減を防ぐ対応策を、130万円の壁を超えても繁忙期など一時的な労働時間の増加による場合は扶養を抜けずにいられる制度を設けることとしています。
この社会保険適用拡大について、ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽に育成協会までお問合せください。
-
- 60時間超残業手当について
2023年4月1日から中小企業における時間外労働の対応が変更されました。経営者として押さえておきたいことは以下の通りです。
①残業時間が60時間を超える場合、60時間までの分は25%の割増が適用されますが、60時間を超える部分の時間にはさらに25%上乗せして50%以上の割増を支払う必要があります。
②ただし、この25%上乗せ部分については休暇で代替することも可能です。例えば、76時間の残業の場合、60時間を超える16時間については25%の割増を支払う代わりに、4時間の休暇を与えることで代替できます。(76時間の25%の割増は必要です。)
③60時間を超える残業手当に関しては、就業規則(給与規定)の改定が必要です。ただし、実際に60時間超の残業が発生しない場合は、他の改定に合わせて対応すればよく、即時改定する必要はありません。
④60時間超の残業計算が組み込まれている給与計算ソフトを使用している場合でも、60時間超の残業が発生する前に設定の確認をしておく必要があります。
-
- 残業未払いに対して元社員から裁判を起こされました。
ご相談内容(飲食店)
元社員から残業代未払い請求についての訴えを起こされました。
育成協会の対応
この時、本人の申告と実態を計算し直す必要がありました。
また、訴えを起こした社員は、勤務態度に問題があったため店長にヒアリングし、就業中に寝ていた時間、その他問題のある行動を把握してレポートを作成、労働基準監督署に提出しました。
結果として。残業代未払いについて2割程度、こちらの要求が通り、支払う金額を抑えることができました。