労災なのに健康保険証で受診・・・するとどうなる?

労災保険の方が手厚いのに

労災の場合、労災指定病院では、自己負担なしで治療を受けることができます。仕事を休んだ場合の補償も健康保険より手厚く、労働者にとって頼もしい制度です。

ところが何らかの事情により、会社へ労災が起きたことを申告せず、病院にも知らせずに、健康保険証を利用して治療を受けてしまうことがあります。

労災なのに健康保険証で受診し、そのまま放っておくと、どうなるのでしょうか?

実は、労災なのに健康保険証を提示して受診してしまうと、後から健康保険を労災保険に切り替える非常に大変な手間がかかることになります。

お問い合わせの多い、ケガの治療を受けた事例についてご紹介します。

治療費が戻ってくるまで数カ月

まずざっくりご説明すると、以下の流れになります。

①健康保険から未払い医療費の請求書が届く

②支払いを行い、領収書をもらう

③既に病院で支払った分と合わせて、医療費10割分の領収書原本をかき集める

④労災請求書類を作成する(勤務先に労災を申し出る & 再度病院へ行く必要あり)

⑤労基署に書類一式を提出する

ここまで、事故発生から早くても数カ月、長いと半年以上かかります。

その後、労基署からの支給決定通知をひたすら待つことになります。

 

以上のご説明で、「労災で健康保険証を使うのはやめておきます」とご納得いただいた方は、続きを読まなくても大丈夫です。

ここまで読んでもやっぱり、健康保険証が手軽でいいのでは?と思われる方や、保険のしくみにご興味のある方は、どうぞ先へお進みください。

「負傷原因のお問合せ」が届く

外傷性のケガ(骨折、ねん挫など)で健康保険証を使うと、後日、保険者(協会けんぽ、またはお勤め先の健保組合等)から、「負傷原因のお問合せ」調査書が届きます。負傷日時、場所、原因、負傷したときの状況などの質問事項に回答し、署名して返送します。

回答の結果により、業務中や通勤途中のケガであることが判明すると、原則として労災保険の適用となり、健康保険の適用が受けられなくなります。

なお、保険者が病院から受診の連絡を受けるまでに2,3か月かかるため、負傷原因のお問合せも受診から数か月後に届くのが通例です。

健康保険から労災保険に変更する場合、以下にご紹介する2つの道のいずれかを取ることになります。かかる手間に大きな違いがありますが、どちらの道になるかは、受診した医療機関の指示を受けることになります。被災者や勤務先が指定することはできません。

健康保険から労災へ切り替えてもらう😊

まず、医療機関に連絡を取り、受診原因となった傷病が労災だったことを伝えます。その際、健康保険から労災への切り替えができるかどうかを確認してください。

切り替えができる場合、医療機関より、所定の労災請求書類を持ってきてくださいと指示があります。指示を受けた書面を用意し、医療機関に提出しましょう。ほどなく健康保険の自己負担額の返金を受けることができます。

なお、受診した月の月末までに労災であることを申告した場合、おおむねこちらの方法で対応してもらえます。

健康保険から労災へ切り替えてもらえないとき😢

ただ、受診から数カ月も経つと、健康保険の精算が終わっているため、医療機関が労災へ切り替えてくれる可能性は低くなります。その場合、いったん被災者が医療費全額を負担し、自ら労働基準監督署に対して労災請求を行います。

先述の「負傷原因のお問合せ」で、負傷原因が労災であった旨を回答したり、被災者が自発的に労災であることを保険者や医療機関に連絡したりしたときは、保険者から未払い分の医療費返還通知書(振込用紙)が届きます。

この未払い分(医療費全体の7割)を納付し、その領収書原本と、既に医療機関で支払った医療費の領収書(同3割)原本、合わせて10割分の領収書原本を揃えましょう。

また、振込用紙と一緒に厳封された「レセプト(診療報酬明細書)」が届くので、絶対に開封しないでください。

そして所定の労災請求書類を用意し、受診した医療機関にて医師等の証明を受け、10割分の領収書原本、未開封のレセプトを添え、職場を管轄する労働基準監督署に提出します。

労災は正しく申告を!

勤務先も、従業員から過去のケガが労災だったと伝えられれば、労災請求の書類を準備したり、休業していた場合は労基署への死傷病報告を行ったりと、突然降ってわいた対応に追われることになりかねません。

最初から労災保険を適用していれば、する必要のなかった膨大な作業に忙殺されることなく、しっかり治療費全額の補償を受けられます。業務中のみならず、通勤中のケガの場合でも、労災であることを正しく医療機関に伝えて受診するよう、普段から会社で意識づけを実施しましょう。

お問い合わせ/Contact
TOP
loading