外国人労働者の労務管理経験者に聞く!経営者が見落としてはいけない、ここがポイント!

中小企業でも外国人を雇用する経営者様は増加する一方です。育成協会でも外国人雇用に関するご相談を多くお受けするようになりました。日本人を雇用する場合と、何が同じで何が違うのか、どんなことに気を付ければよいのでしょうか。

今回は、大手メーカーの海外製造子会社における社員管理を含む人事・労務管理に30年以上携わった経験を持つ、育成協会のスタッフの倉地雅美に、日本人経営者が外国人労働者を雇用する際にトラブルになりがちなこと、気をつけることを聞きました。

 

海外工場で外国人労働者の人事・労務マネジメントをした経験にもとづくアドバイス

インタビュアー(以下「イ」):倉地さんはどんな業務をこれまで経験されてきたのですか?

 

倉地:いわゆる人事労務全般ですね。メーカーなので、社内に工場、営業所、研究所があり、入社後は営業所総務部からスタートしました。その後、研究所・製造工場の人事労務部門を経験させてもらいました。海外に出たのは、入社してから20年ほど経った頃でした。

 

イ:どちらの国に赴任されたのですか?

 

倉地:マレーシアです。エアコンの海外製造子会社の工場でした。そこで管理部門全般を見る立場で勤務していました。

 

イ:外国人従業員の労務管理をなさっていたのはいつ頃になりますか?

 

倉地:国内の工場の時も外国人外国人実習生の労務管理を行っていましたが、やはり主としてマレーシアに赴任していた期間になります。海外の駐在先では、マレーシア人以外の外国人社員も働いていたので、その労務管理もやっていました。

 

意外?ストレートに本音を言ってくれない、上司への反論は遠慮がちなローカルスタッフ

イ:最近日本でも外国人労働者が増えていますが、日本人労働者との違いをどんなところで感じますか?

 

倉地:外国人と一口にいっても全員一律にこうだとは言えません。あくまでも私の経験での話になりますが、管理部門全般を監督する立場で、労務管理をする管理部門スタッフとのコミュニケーションを通して、マレーシアなどアジアの国では、組織の階層を意識している従業員がとても多いと感じました。
マレーシアでは、基本的に上司の指示なり意見には、部下はあまり反論してこないんです。特に、会議など他のメンバーのいる前では部下が自分から意見を積極的に述べることはほぼありません。
マレーシアのなかでも、マレー系の人は特に自分の意見を表に出さない傾向が強かったと思います。同じマレーシアの人でも、インド系や中国系の人は、ものごとをはっきり言うタイプの人が多い印象でした。また、いわゆるブルーカラー層の人も、自分から上司に意見を直接言う人は少ないようです。

 

イ:同じマレーシア人でも、民族によって違うんですね。

 

倉地:外国人をマネージメントする人を対象にした研修でも、東南アジアの人はプライドが高く人前で叱られるのを嫌うとの話がありました。それも関係しているのかもしれませんね。部下を人前で注意してしまって、後から嫌がらせを受けた経験があるという話を聞いたことがあります。日本人はストレートに叱りがちですが、部下のプライドを傷つけないように配慮することは重要でした。

 

「わかりあってるつもり」が生む労務トラブルを未然に防げ!

イ:他に外国人労働者を管理するときに気をつけていたことはありますか?

 

倉地:先ほどあまり自分の意見を言わないとお話しましたが、ストレートに言ってくれない人から本音を聞き出すことを意識していました。他のスタッフがいるところで意見を聞くと控えてしまうので、1対1でコミュニケーションをとるようにしました。そうすることで、部下が自分の考えを話してくれるようになりました。もともと、人と違った意見はあまり言いたくないと考える人が、マレーシアには多い印象です。
また、母国語が英語ではない者同士でコミュニケーションをとる上で、確実に意思疎通することに気をつけていました。意外と意思疎通できていないケースがあるんです。そのため、書面での確認、意思疎通を必ず行うことを大切にしていました。

 

イ:意思疎通の齟齬によってトラブルが起きたことはありましたか?

 

倉地:働いてもらう前に、労働条件の設定の話合いをしますよね。一旦、双方が合意して結論を出したつもりなのに、お互いの理解がちがっていた、お互い誤解したままで雇用の話が進みそうになったということがありました。
幸い、この件は労働トラブルにはならなかったのですが、会社側が伝えた条件、話が、相手にしっかり伝わっていなかったと感じることは時々ありました。
また、マレーシア人は、日本人よりも家族や文化・習慣を大事にする人が多いので、休暇の取得や行事のときに早く帰宅したりする権利の行使を当然のものだと思っています。
そういった考え方を当たり前だと思っておかないと、トラブルの種になります。日本人と同じ感覚、仕事優先のみで外国人労働者をマネージメントしないことが大事です。

 

外国人労働者雇用に向けては多様性への理解と尊重が大切!

イ:他に外国人労働者ならではの傾向などはありますか?

 

倉地:転職へのハードルが日本人よりもかなり低いことですね。給料やポストが今より少しでも良い環境があれば、すぐに職場を変えてしまう傾向があります。
賃金に対する意識は強く、従業員同士もお互いの給与をオープンに比較し合う傾向にあります。そのためにも給与基準を明確にしておくことが望ましいです。
外国人は、給与基準などが不明瞭だと感じた瞬間、ためらいなく辞めることが多いです。そういう意味では、会社に対する帰属意識は日本人ほど高くないと言えるかもしれません。

 

イ:育成協会にはどんな相談が寄せられますか?

 

倉地:採用時の条件面に関するご相談はよくいただきますね。就労の問題や、滞在資格についてもご相談いただきます。
これまで外国人労働者との大きなトラブル相談はなかったのですが、今後ますます外国人労働者が増えると、トラブルが増加する可能性はあります。

 

イ:労務管理の徹底で防げることがまだまだありそうですね。

 

倉地:そうですね。ここまで外国人労働者の労務管理について難しい側面ばかり述べてきましたが、私自身はマレーシアで多様な価値観、特性を備えたスタッフと一緒に仕事が出来たことが貴重な経験であり、いろいろと勉強になりました。日本においても今後ますます多様性への理解と尊重を踏まえた人事労務管理が重要になってくると思います。お悩みの点やお困りのことがあれば、お気軽にご相談いただければと思います。今日はありがとうございました。

 

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